ひとときの暗がり
作:しもたろうに
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夏休みも終わろうと言う8月末日。
タクヤが犬小屋に「シータ」メンバーを集めた。
今年の文化祭から始まるバンド出演の有無についての話し合いを行うためだ。
さすがに、自分の家の離れに集合と言う事になっている以上、不参加を決め込む事など出来るはずも無い。
局長もしぶしぶ、この集まりには参加していた。
演劇部の練習にはもう1週間以上顔を出していない。
そんな局長に対して、タクヤもウルオもムラヤンも、特に何を言う訳でもなく普段通りに接した。
それは、彼らなりの優しさだったのだが、そんな事に気が付ける局長ではなく「何だ。皆ちょろいものだな。」とすら思う始末だった。
尋常じゃなく打たれ弱い硝子細工のような心と1秒で人を見下すことのできる尊大な自我が二律背反する男。それが局長なのだ。
出演については、9割方決定していた。
大体、ライブなんて出演料だけでも結構なお金が必要な事を考慮すれば、「無料で出来るライブ」と言うだけでも、十分に参加する価値がある。
そこで参加を見合わせるようでは、 結局何のためにバンドを組んでいるのか…と言う根本的な話になってくる。とタクヤは考えていた。
ただ問題がある。
今回は、高校の文化祭でのバンド出演だ。
校外の人間がステージに上がる事は出来ない。
別の学校に通っているギターの啓司が参加できないのだ。
それどころか「オレのキーボードがメインになるオリジナル曲なら、ギターがなくても何とかなる。」と局長が言い出すかもしれない。
文化祭のライブにおいては頑なにオリジナル曲ではなくコピー曲を押していたタクヤにとってギターなしでのライブなど考えられなかった。
ただ当の局長は半引きこもり生活を行っており今回の文化祭でのバンド出演について、いつもと比べると明らかにトーンダウンしている。
タクヤのコピー曲提案にも「ギター問題がどうにかなれば今回は従うよ」と事前に話していた。
「シータ」の活動履歴で初めて完全に一人でバンドのイニシアチブを握ることができたタクヤは、絶対に自分の力でこのライブを成功させたかった。
そこでタクヤが考え出した案は、別のギタリストを連れて来ることだった。
この日、タクヤはそのギタリストを犬小屋に連れてきていた。
「紹介するよ。今回、啓司がライブに出られないから、啓司の代わりに一緒にやってくれるギタリスト。そしてオレの従兄弟の白石雅之君。」
身内だった。
友達の少なさでは局長と引けを取らないタクヤ。
唯一ギターを弾くことのできる知り合いは、たまたま同じ学校に通っていた従兄弟しかいなかったのだ。
タクヤの簡単な紹介に続いて。
「あ…え~と…ども。白石です。マァ、オレもギターとか下手くそなんだけど、折角タクヤに誘われたんで頑張ってみるよ。よろしくね。」
白石は実にさわやかに自己紹介をした。
異常に吊り上がった口角から覗く八重歯がまぶしい。
確実に今ここにいるシータのメンバーの誰よりも輝いている。
今、高校2年生。つまり、局長にとって同じ学校の一つ上の先輩と言う事になる。
局長は「絡みにくい事この上ないな。」と考えながら、白石の自己紹介を聞いていた。
「ど~も~栗山ウルオで~す。ウルオって呼んでね。」
「こんにちは。ムラヤンとお呼び下さい。白石王子。」
「本来のギタリスト啓司です。今回は、僕の代わりによろしく頼むよ!」
ウルオ、ムラヤン、啓司が次々と挨拶をする。
「あ…ども…よろしくお願いします。」
人見知りな局長にとって、最大限の挨拶をぶちかました。
局長は、自称めちゃくちゃ人見知りの人から「オレより人見知りな人を初めて見た」と言われるほど極度の人見知り。
知らない人の前では自分の意見など言えるはずも無い。
今日の犬小屋は完全にタクヤの独壇場だった。
いつもなら大揉めに揉めた挙句、保留になる演奏曲の設定も、GLAY派のタクヤのごり押しであっという間に「GLAY」のコピー曲に決まった。
曲は、ノリもよく誰でも知っているだろう「誘惑」と夏なのになぜか「Winter, again」。あと、夏だし少しマニアックな曲も。と言う事で「Yes, Summerdays」。
さらに、L'Arc-en-Ciel派のことも考えて、「L'Arc-en-Ciel」からも1曲、最新アルバムから「Shout at the Devil」を演奏することになった。
ここまで全てが思い通りに決まると思っていなかったタクヤはニヤニヤが止まらない。
じゃあ「じゃあ来週から練習を開始しよう。それまでに各自パートの練習をしておいてね。」と皆に予め自腹で購入してコピーを取っておいたそれぞれの曲の楽譜と曲の入ったMDを配っていった。
啓司の分は用意されてなかった。
「僕はしばらくここには来ない」
啓司のその言葉で、この日は解散となったのだった。
タクヤが犬小屋に「シータ」メンバーを集めた。
今年の文化祭から始まるバンド出演の有無についての話し合いを行うためだ。
さすがに、自分の家の離れに集合と言う事になっている以上、不参加を決め込む事など出来るはずも無い。
局長もしぶしぶ、この集まりには参加していた。
演劇部の練習にはもう1週間以上顔を出していない。
そんな局長に対して、タクヤもウルオもムラヤンも、特に何を言う訳でもなく普段通りに接した。
それは、彼らなりの優しさだったのだが、そんな事に気が付ける局長ではなく「何だ。皆ちょろいものだな。」とすら思う始末だった。
尋常じゃなく打たれ弱い硝子細工のような心と1秒で人を見下すことのできる尊大な自我が二律背反する男。それが局長なのだ。
出演については、9割方決定していた。
大体、ライブなんて出演料だけでも結構なお金が必要な事を考慮すれば、「無料で出来るライブ」と言うだけでも、十分に参加する価値がある。
そこで参加を見合わせるようでは、 結局何のためにバンドを組んでいるのか…と言う根本的な話になってくる。とタクヤは考えていた。
ただ問題がある。
今回は、高校の文化祭でのバンド出演だ。
校外の人間がステージに上がる事は出来ない。
別の学校に通っているギターの啓司が参加できないのだ。
それどころか「オレのキーボードがメインになるオリジナル曲なら、ギターがなくても何とかなる。」と局長が言い出すかもしれない。
文化祭のライブにおいては頑なにオリジナル曲ではなくコピー曲を押していたタクヤにとってギターなしでのライブなど考えられなかった。
ただ当の局長は半引きこもり生活を行っており今回の文化祭でのバンド出演について、いつもと比べると明らかにトーンダウンしている。
タクヤのコピー曲提案にも「ギター問題がどうにかなれば今回は従うよ」と事前に話していた。
「シータ」の活動履歴で初めて完全に一人でバンドのイニシアチブを握ることができたタクヤは、絶対に自分の力でこのライブを成功させたかった。
そこでタクヤが考え出した案は、別のギタリストを連れて来ることだった。
この日、タクヤはそのギタリストを犬小屋に連れてきていた。
「紹介するよ。今回、啓司がライブに出られないから、啓司の代わりに一緒にやってくれるギタリスト。そしてオレの従兄弟の白石雅之君。」
身内だった。
友達の少なさでは局長と引けを取らないタクヤ。
唯一ギターを弾くことのできる知り合いは、たまたま同じ学校に通っていた従兄弟しかいなかったのだ。
タクヤの簡単な紹介に続いて。
「あ…え~と…ども。白石です。マァ、オレもギターとか下手くそなんだけど、折角タクヤに誘われたんで頑張ってみるよ。よろしくね。」
白石は実にさわやかに自己紹介をした。
異常に吊り上がった口角から覗く八重歯がまぶしい。
確実に今ここにいるシータのメンバーの誰よりも輝いている。
今、高校2年生。つまり、局長にとって同じ学校の一つ上の先輩と言う事になる。
局長は「絡みにくい事この上ないな。」と考えながら、白石の自己紹介を聞いていた。
「ど~も~栗山ウルオで~す。ウルオって呼んでね。」
「こんにちは。ムラヤンとお呼び下さい。白石王子。」
「本来のギタリスト啓司です。今回は、僕の代わりによろしく頼むよ!」
ウルオ、ムラヤン、啓司が次々と挨拶をする。
「あ…ども…よろしくお願いします。」
人見知りな局長にとって、最大限の挨拶をぶちかました。
局長は、自称めちゃくちゃ人見知りの人から「オレより人見知りな人を初めて見た」と言われるほど極度の人見知り。
知らない人の前では自分の意見など言えるはずも無い。
今日の犬小屋は完全にタクヤの独壇場だった。
いつもなら大揉めに揉めた挙句、保留になる演奏曲の設定も、GLAY派のタクヤのごり押しであっという間に「GLAY」のコピー曲に決まった。
曲は、ノリもよく誰でも知っているだろう「誘惑」と夏なのになぜか「Winter, again」。あと、夏だし少しマニアックな曲も。と言う事で「Yes, Summerdays」。
さらに、L'Arc-en-Ciel派のことも考えて、「L'Arc-en-Ciel」からも1曲、最新アルバムから「Shout at the Devil」を演奏することになった。
ここまで全てが思い通りに決まると思っていなかったタクヤはニヤニヤが止まらない。
じゃあ「じゃあ来週から練習を開始しよう。それまでに各自パートの練習をしておいてね。」と皆に予め自腹で購入してコピーを取っておいたそれぞれの曲の楽譜と曲の入ったMDを配っていった。
啓司の分は用意されてなかった。
「僕はしばらくここには来ない」
啓司のその言葉で、この日は解散となったのだった。
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