ひとときの暗がり
作:しもたろうに [website]
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「女」と言う生き物への強烈な不信感。これから行こうとしている場所は、その「女」しかいない所。
絶望に打ちひしがれた局長の足取りは重い。
すでに局長の心の中からは「ハーレム」と言う言葉は消えていた。
部活の説明があった日、「守山明美」と名乗った部長は、部の活動内容についてこう説明した。
「今、演劇部は~人手が足りなくて困って…ます。え~と…でも、今年は沢山の人が来てくれたみたいだから、嬉しくて…え~と… 男子も来てくれたので…劇の幅も広がります。え~と…練習は、月・水・金の週3日で、体育館でやってます。え~と…あっ。練習内容。エッと…練習内容は、体育館裏で発声したり…ステージでストレッチと、あと台本の読み合わせ。今やってるのは…『すてふぁにー』だよね?」
少し不安そうに座っている人達の方に視線を送った。
「そうそう」
座っていた女の子の中で、黒崎と言う名札を付けた少し大柄な子が答える。
「…とかをやってます。今週はいいので、来週からエッと…学校終わったら体育館に来てください。えっと…今から配る紙に、名前とクラスを書いてください。」
そう言うと紙を回し始めた。良く分からないまま、その紙の空欄部分に4人はそれぞれのクラスと名前を書いて次に回した。
今考えるとあの紙が入部希望用紙だったのだろう。
もう後戻りはできない。
局長は そんな事を考えながら、タクヤ達との待ち合わせ場所に向かった。
そこにはすでにタクヤとムラヤンがいた。
「ウソ?まぢで?」
「オレ太ってたわ~」
かすかに会話が聞こえる。
おそらく、先日の身体計測の事でも話しているのだろう。
タクヤが局長に気がつき「遅かったな」と声をかけた。
しばらくして、ウルオがやってきた。
揃った4人はドキドキしながら体育館へ赴く。
不安と期待(とまぁまぁの絶望)を胸にステージへの扉は開け放たれた。
…
………
………………
…………………………
ステージ上には、また誰もいなかった。
「コレってさぁ~前にチラッと言ってた発声って言うヤツに行ったのかな?」
タクヤがつぶやいた。
なるほどと頷いた後の3人はタクヤの後について体育館の裏へ。
「た~て~ち~つ~て~と~た~と~。」
体育館を背に一列に並んだ数人の女の子たちが、視線の向こう側に見える電車の通る線路に向かって大きな声を出している酷く奇妙な光景が目に飛び込んできた。
「オイオイオイオイオイ…何かやってるぞ。」
部員を見つけた4人は少しずつ上がっていくテンションを感じながら、その集団に少しずつ近づいていった。
そのうちの1人が局長達に気がつき
「あぁ!部長!男子たち来たよ~」
と、局長達に近づきながら言った。
守山も局長たちに気が付き、振り向いた。
「あ~~…エッと。ごめんなさい。来るのが遅かったから先に始めてたの。」
そして
「香奈ちゃんも戻って。え…と、じゃあ、あなた達は皆の横に並んでください。」
と手招きをする。
「あ…はい。」
と言ったタクヤに習って、局長たち4人はすでに並んでいた列の端に並んだ。
「エッと…よく分からないかもしれないけど…取り合えず、皆が言うように真似してみてね」
守山はそれだけ言うと再び線路の方に向いた。
「香奈」と呼ばれた女の子も足早に列に戻る。
それに合わせたように、守山が大きな声で「あえいうえおあおかけきくけこかこさせしすせそさそ…」 と言う謎の呪文を叫び始めた。
続いて全員が同じように「あえいうえおあおかけきくけこかこさせしすせそさそ…」 と言う謎の呪文を叫んでいる。
局長たちは訳も分からず、取り合えず同じようにその謎の呪文を叫んでみた。
一通り終わった後、守山が「最後にちょうおん!」と言うと、全員が「あ~~~~~~~」と息の続く限り叫んだ。
それが終わると、ぞろぞろとステージのある体育館の中の戻っていった。
「何してたの?」
ウルオが不思議そうにタクヤに聞く。
しかし、タクヤに分かるはずも無く、ただ「さ~」とだけ言って首を横に振った。
その様子を見ていたさっきの子が局長達の方に小走りで寄ってきて、ぺこりと頭を下げて言った。
「ね~ね~。皆、1年生だよね。始めまして。1年生の白石香奈です。よろしくお願いします。」
局長にとっておそらく高校に入って初めてまともに女の子にあいさつされた瞬間だった。
「あ…どうも…」
局長がもごもごしているのを割ってタクヤが
「浦沢タクヤです。一年です。よろしくお願いします。」
と言った。続いて
「村山です…」
「ど~も~。7組の栗山ウルオです~。」
それぞれが挨拶をする。
「うそ~君今7組って言った??あたしも7組だよ。じゃあさ!じゃあさ!あたしの事クラスで見た事ない?」
「え~7組?!同じだったんだ。へ~。同じか~。でもゴメン!まだ皆の顔把握できてないかも…席どの辺り?」
ウルオと白石加奈はどうも同じクラスだったらしく偉く盛り上がっている。
局長は「ウルオ…てめぇ…高校生活で初めて挨拶してくれたオレの女をォおおおお!オレの穴をぉおお」と心の中で毒づいていた。
不意に加奈が局長に話しかける。
「アレ?そう言えば!ね~ね~あなたは何君ですか?」
その不意打ちに局長が「あ…あ…」と躊躇していると
「あ~コイツは、高井信也って言うんだよ。んでも、皆からは局長って呼ばれてるんだけどね。」
局長よりも早くタクヤが言った。
「ヘ~何で高井君なのに、局長なの?」
「あ~それはね…」
本来、局長と白石加奈の間で繰り広げられるであろう会話がタクヤと白石加奈の間で交わされ、そして盛り上がり始めた。
局長は「ここにきてもやっぱり女の子と馴染めないのか」と考えると同時に、「勘違いしていた。ここがオレにとってのハーレムとなるためには、こいつらも邪魔でしかないのか」と考え始めていた。
しかし、局長の背中にめらめらと黒い何かがたぎり始めていた事に、この時その場にいた誰も気が付くことはなかった。
絶望に打ちひしがれた局長の足取りは重い。
すでに局長の心の中からは「ハーレム」と言う言葉は消えていた。
部活の説明があった日、「守山明美」と名乗った部長は、部の活動内容についてこう説明した。
「今、演劇部は~人手が足りなくて困って…ます。え~と…でも、今年は沢山の人が来てくれたみたいだから、嬉しくて…え~と… 男子も来てくれたので…劇の幅も広がります。え~と…練習は、月・水・金の週3日で、体育館でやってます。え~と…あっ。練習内容。エッと…練習内容は、体育館裏で発声したり…ステージでストレッチと、あと台本の読み合わせ。今やってるのは…『すてふぁにー』だよね?」
少し不安そうに座っている人達の方に視線を送った。
「そうそう」
座っていた女の子の中で、黒崎と言う名札を付けた少し大柄な子が答える。
「…とかをやってます。今週はいいので、来週からエッと…学校終わったら体育館に来てください。えっと…今から配る紙に、名前とクラスを書いてください。」
そう言うと紙を回し始めた。良く分からないまま、その紙の空欄部分に4人はそれぞれのクラスと名前を書いて次に回した。
今考えるとあの紙が入部希望用紙だったのだろう。
もう後戻りはできない。
局長は そんな事を考えながら、タクヤ達との待ち合わせ場所に向かった。
そこにはすでにタクヤとムラヤンがいた。
「ウソ?まぢで?」
「オレ太ってたわ~」
かすかに会話が聞こえる。
おそらく、先日の身体計測の事でも話しているのだろう。
タクヤが局長に気がつき「遅かったな」と声をかけた。
しばらくして、ウルオがやってきた。
揃った4人はドキドキしながら体育館へ赴く。
不安と期待(とまぁまぁの絶望)を胸にステージへの扉は開け放たれた。
…
………
………………
…………………………
ステージ上には、また誰もいなかった。
「コレってさぁ~前にチラッと言ってた発声って言うヤツに行ったのかな?」
タクヤがつぶやいた。
なるほどと頷いた後の3人はタクヤの後について体育館の裏へ。
「た~て~ち~つ~て~と~た~と~。」
体育館を背に一列に並んだ数人の女の子たちが、視線の向こう側に見える電車の通る線路に向かって大きな声を出している酷く奇妙な光景が目に飛び込んできた。
「オイオイオイオイオイ…何かやってるぞ。」
部員を見つけた4人は少しずつ上がっていくテンションを感じながら、その集団に少しずつ近づいていった。
そのうちの1人が局長達に気がつき
「あぁ!部長!男子たち来たよ~」
と、局長達に近づきながら言った。
守山も局長たちに気が付き、振り向いた。
「あ~~…エッと。ごめんなさい。来るのが遅かったから先に始めてたの。」
そして
「香奈ちゃんも戻って。え…と、じゃあ、あなた達は皆の横に並んでください。」
と手招きをする。
「あ…はい。」
と言ったタクヤに習って、局長たち4人はすでに並んでいた列の端に並んだ。
「エッと…よく分からないかもしれないけど…取り合えず、皆が言うように真似してみてね」
守山はそれだけ言うと再び線路の方に向いた。
「香奈」と呼ばれた女の子も足早に列に戻る。
それに合わせたように、守山が大きな声で「あえいうえおあおかけきくけこかこさせしすせそさそ…」 と言う謎の呪文を叫び始めた。
続いて全員が同じように「あえいうえおあおかけきくけこかこさせしすせそさそ…」 と言う謎の呪文を叫んでいる。
局長たちは訳も分からず、取り合えず同じようにその謎の呪文を叫んでみた。
一通り終わった後、守山が「最後にちょうおん!」と言うと、全員が「あ~~~~~~~」と息の続く限り叫んだ。
それが終わると、ぞろぞろとステージのある体育館の中の戻っていった。
「何してたの?」
ウルオが不思議そうにタクヤに聞く。
しかし、タクヤに分かるはずも無く、ただ「さ~」とだけ言って首を横に振った。
その様子を見ていたさっきの子が局長達の方に小走りで寄ってきて、ぺこりと頭を下げて言った。
「ね~ね~。皆、1年生だよね。始めまして。1年生の白石香奈です。よろしくお願いします。」
局長にとっておそらく高校に入って初めてまともに女の子にあいさつされた瞬間だった。
「あ…どうも…」
局長がもごもごしているのを割ってタクヤが
「浦沢タクヤです。一年です。よろしくお願いします。」
と言った。続いて
「村山です…」
「ど~も~。7組の栗山ウルオです~。」
それぞれが挨拶をする。
「うそ~君今7組って言った??あたしも7組だよ。じゃあさ!じゃあさ!あたしの事クラスで見た事ない?」
「え~7組?!同じだったんだ。へ~。同じか~。でもゴメン!まだ皆の顔把握できてないかも…席どの辺り?」
ウルオと白石加奈はどうも同じクラスだったらしく偉く盛り上がっている。
局長は「ウルオ…てめぇ…高校生活で初めて挨拶してくれたオレの女をォおおおお!オレの穴をぉおお」と心の中で毒づいていた。
不意に加奈が局長に話しかける。
「アレ?そう言えば!ね~ね~あなたは何君ですか?」
その不意打ちに局長が「あ…あ…」と躊躇していると
「あ~コイツは、高井信也って言うんだよ。んでも、皆からは局長って呼ばれてるんだけどね。」
局長よりも早くタクヤが言った。
「ヘ~何で高井君なのに、局長なの?」
「あ~それはね…」
本来、局長と白石加奈の間で繰り広げられるであろう会話がタクヤと白石加奈の間で交わされ、そして盛り上がり始めた。
局長は「ここにきてもやっぱり女の子と馴染めないのか」と考えると同時に、「勘違いしていた。ここがオレにとってのハーレムとなるためには、こいつらも邪魔でしかないのか」と考え始めていた。
しかし、局長の背中にめらめらと黒い何かがたぎり始めていた事に、この時その場にいた誰も気が付くことはなかった。
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