新都社×まんがおきば連携作品

ひとときの暗がり

作:しもたろうに [website]

高校一年生 - (2)身体計測の日

絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。絶望。

局長は今、猛烈に絶望している。

事の発端は新年度、必ず行われる「身体計測」での事だった。

局長の通っている 「ニュース第一高等学校」通称「一高」では身体計測は大きな行事の一つで、体重を量る教室、身長を測る教室、視力を測る教室とそれぞれに分かれ、生徒たちはおのおの空いている所に行って、計測をしてもらう。

身体計測が行われる日は午後から授業も無い。

なぜ、ここまで大々的に 身体計測をする必要があったのか。それは誰にも分からなかった。

相変わらず一人の局長は、周りがワイワイ楽しそうにウロウロしているのを横目にそそくさと身長、体重、座高、視力、聴力と計測していく。

早々に全ての工程を終了した局長は、教室に戻ってきた。

教室でもどうせやる事は何も無い。

どうして、半日も時間があるのか。

その時間をどう潰したものか途方にくれながら教室に入る。

局長の椅子の周りに数人の女の子が集まっていた。

「大丈夫だって。」とか「楽しそう」とか「早く早く」とか言う声が聞こえている。

また絡まれるんだろうか…と、少し足取り重く自分の席に近づいて行くと、一人の女の子が

「ゴメンね。高井君(局長の苗字)。席借りちゃった~…あっ、でもジャマだったら 『どけ』って言ってくれたらどくからね。」

と局長に話し掛けてきた。

局長は意味が分からなく「え・・・」とだけ言って下をうつむいた。

女の子たちは口々に「早く『どけ』って言ってよ。」と囃し立てる。

どうやら、普段殆どしゃべらない局長に、言わなさそうな言葉をしゃべらせたかった様だ。

「早く」

「早く」

「ほらぁ~」

なぜかさらに囃し立てる。

数秒の間。

局長は困り果て、そして搾り出すようにこう言った。

「…あ…オレの椅子が使いたいんだったら、ずっと座ってていいよ。オレは…あっち行くから…」

最初の「あ」は声が裏返っていた。小林製薬である。

このフェミニストなのかナルシストなのかさっぱり分からない、あまりにも的外れでトンチンカンな答えに、女の子たちは呆然としていた。

局長も「あっちに行く」と言った以上その場所に残る訳にもいかず、急ぎ足で教室を後にした。

行き先は決まっている。

タクヤの所だ。

しかし生憎とタクヤはまだ身体計測を終えていないようだ。

タクヤと会う事を諦めた局長は、その足で水飲み場へ行った。

そして、乾いてもいない喉を潤しているかの様に がぶがぶと水を飲んだ。

がぶがぶがぶがぶがぶがぶがぶがぶがぶがぶ・・・・

目的が欲しかった。

目的があるから自分は教室を離れたんだと、もし誰かに聞かれたときに答えられるように。

無駄なプライドの塊だった局長にとって、「誰も相手にしてくれる人がいないからここで突っ立っている」と言う事実を誰かに知られる訳にはいかなかった。

例え周りからそうとしか見えなかったとしても、「何をしているの?」と聞かれたときのために目的が欲しかった。

どれだけ水を飲んだ事か…

苦しくなったら口を離し、出しっぱなしの水を手に貯めては捨てた。

そしてまた水を飲んだ。

がぶがぶがぶがぶがぶがぶがぶがぶがぶ…

チャイムが鳴り響く。

永遠とも思える時間が終わりを告げたのだ。

教室に入ると、もう局長の椅子の近くには誰もいなかった。

椅子にどかっと座った局長は、いつも通りに寝たフリをした。

もうお腹は夜店に売られている ヨーヨーのようにタプタプしている。

そして、次の日から局長はいっそう孤独になった。

昨日女の子たちに言った言葉が「調子に乗ってるつまらない奴の言葉」として取られ、誰も局長に話し掛けなくなったからだ。

女の子の間を噂は駆け抜けていった。もう誰も相手にしてくれない。

局長は、猛烈に絶望していた。

このあからさまな失敗。

しかし局長はその失敗がわからなかった。

何もしていないのに、急に無視され始めた…

「女」と言う生き物に対する強烈な不信感だけが局長の中にどんどん募っていく。

その日はくしくも、初めて演劇部での練習があった日だった。

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